ジュディ 虹の彼方に

ジュディ・ガーランドの伝記映画。試写会にて鑑賞。
つい最近初めて(そう、すごい今更)「オズの魔法使い」を鑑賞したばかりで、すっかりジュディ・ガーランドのファンになっていた私。本作も楽しみにしておりました。
レネー・ゼルウィガーがアカデミー賞主演女優賞を受賞したこともあり、鑑賞前の期待はかなり高め。

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レネー・ゼルウィガーの演技は最高

いやほんとうに。そらオスカー取るわ。素晴らしい演技だった。

キレキレのパフォーマンスも歌も絶品。痺れるほどかっこいい。

弱々しく儚げなプライベートの姿、さびしげな猫背でタバコをふかす様、どこをとってもパーフェクトだったと思う。

そしてそれだけで、この映画は100点だった。彼女の素晴らしい演技を堪能できるという一点だけで名作と呼んだって差し支えないと思う。

これは何に関しての話なのか?

しかしながら、これ、いったいなんの映画なのか?って考えてしまった。

「ジュディ・ガーランドの映画」のように描いているけれども、本質的に、「隅から隅までレネー・ゼルウィガーの映画」だったな、と。

それがなんか、不思議な違和感につながったので、その話をします。

この映画で楽しめるのはジュディでなくゼルウィガーの才能

物語としての本作は、「溢れる才能ゆえに傷つき、利用され、それでも愛を求める。全てを失っても、それでも才能の輝きは彼女と共にある」ってな感じで(なんかちょっとポエミーだけどまあそんな感じ)、それ自体はよいと思うのですよ。

たしかにジュディ・ガーランドにまつわる伝説ってやけに悲劇的だったりスキャンダラスだったりで不幸な部分にばかりスポットが当たってしまうけれども、そもそも彼女の才能の素晴らしさ、ちょっとYouTube見てみてほしいんだけど、この、一回聴けばぶっ飛ぶ歌唱力。超カッコいい!!!!!!

だから彼女を「悲劇よりもなによりも才能の人」という風に描いた、その姿勢には賛同する。

しかしながら、彼女の「溢れる才能」というのは、やはり何を置いても歌唱力なのですよね。

曲を自分で描いているわけではないし。

で、その「彼女を翻弄し、一方では彼女を輝かせた才能」というその重要なものがですね、今作では、「レネー・ゼルウィガーの歌声」で代用されてるのですよね。

いや、仕方ないんですよもちろん。

伝記映画ってそういうもんでしょって言われたら、まあそうねえなんだけど。

でもさ、この映画どんだけ観ても、「ジュディ・ガーランドの才能は素晴らしいな」ってならないんですよ。

どこまでもどこまでも、「レネー・ゼルウィガーすげえな」ってなるだけで。いや実際すごいし。

「ボヘミアン・ラプソディ」はなぜ良かったか

ここ最近の伝記映画ブームは「ボヘミアン・ラプソディ」の成功が巻き起こしているみたいだけど、私もあの映画は大好きだったんです。

「ボヘミアン・ラプソディ」は、Queenのカッコ良さを思いっきり描いていたし、なにかとスキャンダラスに描かれがちだったフレディ・マーキュリーという人を、より美しく定義しなおしていた。

それを欺瞞だと呼ぶ声もあると思うけど、私はそれでいいと思ってる。

「ボヘミアン・ラプソディ」はフレディを思い切り美化して、Queenを称える映画だった。

その結果実際にQueenの曲が再評価される流れにも繋がったようだし。

あの映画を観て「レミ・マレックぱねえな」とはならなかった。

それよりも「Queenってかっこいい!」だった。

あと「フレディ・マーキュリーかわいい」とか。

あとメンバーの関係に萌えるとか(?)

ジュディについて思う

つまり私はこの映画のあり方を責めたりするつもりはないんだけれど、というか間違いなくいい映画なのだけど、でもどうしても「ジュディの物語」として意味があったのかどうか、って考えてしまうわけです。

この映画に描かれているものの中で本当のジュディに由来する部分は結局、悲劇的な過去や現在、そして性的少数者とのかかわりの部分くらいで…いやもちろんそれがつまらないものだなんていうつもりはないけれども、あの歌に比べたら。

ジュディの歌声に比べたら、そこは大したことじゃないと言い切れると思うんです。

「(伝記映画だから仕方ないけど)肝腎要のジュディの歌声を聴けないから、ジュディの才能の輝きは一切伝わってこず、レネー・ゼルウィガーの才能ばかりがきらめいている」

というのが私の違和感だったのでした。

勝手な想像ではありますけど、ジュディ・ガーランドの実の娘であるライザ・ミネリがこの映画をよく思っていないというのも、そのあたりが引っかかってるんじゃないのかなと思ったり。

わかんないですけどね。

何にせよいい映画

…と、長々話し込んだ後で今更言うんだけど、いい映画なのは間違いないです。

よくまとまっていて無駄もないし、画面も美しいし、演奏シーンはとにかく素晴らしい。

もし友人が「あの映画どう?」って聞いてきたら、

「めちゃくちゃいいよ」って即答できます。

ただ私はたまたまジュディに対してタイミング的に強い思い入れがあったためにこういう感想になってしまった、という話でした。

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